風の街みやびら

特養の個室を2室に分け、それぞれを屋内外に接続することで個々の状態に応じた生活と介護の多様性を持たせた

物件概要 →詳細

CAnと共同設計
所在地 広島県庄原市
竣工 2014/10
敷地面積 13,840.00m2
建築面積 4,276.93m2
延床面積 4,603.52m2
1F面積 4,276.93m2
2F面積 326.55m2
構造設計:藤尾建築構造設計事務所
設備:PES建築環境設計
施工: 戸田建設広島支店

物件詳細 →概要

広島県庄原市に建つ高齢者福祉施設である。地域に開放された遊歩道や路地、庭を設けて、木造平屋の特別養護老人ホームとショートステイ(以下、特養)が5棟、デイサービスが2棟、 本部棟が1棟という分棟配置にしている。最も大きな面積を占める特養は、小さなリビング(茶の間)を囲む3、4室の個室からなる住宅スケールのセット「コ・ユニット」を、3つ組み合わせて10人1ユニットにしている。個室は4畳半の寝室と、3畳の多目的室に分けて、この地域の農村民家を参照し、寝室を「奥の間」、多目的室を「あだの間」と名付けた。 ベッド回りの生活実態を精査して、従来の個室面積からあだの間を捻出することで、奥の間では介護のプライベート性を高める一方、あだの間では自発的な生活を営み、茶の間や外部と繋がるような、個々の状態に応じた生活の多様性を持たせた。 家型の奥の間と、開放的なあだの間に包まれた建築は、訪れる地域の人からも、ここで暮らす人からも、小さな家が集まった町のように映る。あだの間は縁側、接客、家族室などさまざまな用途に使え、地域住民が気軽に立ち寄れる個室の玄関にもなる。
ひとりひとりの生活風景が空間を彩るような、個に寄り添う介護をしたいという施主の新しい試みが、やがて普通の生活の場として周辺環境に溶け込み、ひとつの風景=町になっていく。